サンタクロース
1章 12月25日
「あー…だりぃ…」
「お帰り。もう寝る?」
「あぁ…」
「そう…おやすみ、サンタ」
「おやすみ…チビタ」
真っ赤な服を脱ぎ捨ててトランクス一枚になったサンタは崩れるようにベットに転がって眠ってしまった。
毎年思う事だけれど、クリスマスだけに活動するサンタは当たり前の様に体力がない。
だから、小さな子どもたちが読むサンタの絵本には丸々と太ったじいさんが描かれている。当たり前だ。クリスマスにしか動かなけりゃそうなるだろうと思う。が、この家のサンタは細身だしじいさんでもない。ただクリスマスにしか動かない、というのは共通点で、言うならもやしっ子だ。鍛えてるサンタも居るけれど、あまりムキムキになってしまうと子供たちに見つかった時に泣き喚かれるらしく見た目を売りとしてしまったサンタはあまり過激な事が出来ない。
部屋の隅のベットを少し遠巻きで眺めながら僕はテレビの電源を切った。何処の番組もサンタの話題で持ちきりだ。中でも最高齢の103歳のサンタはプレゼントを配り終えてからパーティを始めるらしい。何処でどうつくりが変わったのか知らないけど100歳にもなったら大人しく寝てた方が良いんじゃないかと逆に心配になってくるし、この家のサンタは30手前だと言うのにぐったりと眠ってしまっている。こいつの方がよっぽど103歳だ。
静まり返った部屋から月明かりが差し込むと部屋は何処か青白くなって外で静かに降り続ける雪が大仕事の終わりを告げているように優しく降り続いていた。時折聞こえる救急車の音も毎年の恒例なっていて、その音は今年のクリスマスの終了を告げるようなサイレンだった。