孤高の天使
「ちょっと!何でイヴを責めるのよ!」
「ラナッ!いいから」
いつもの口調で前に出るラナをイヴは青い顔をしながら必死で止める。ガブリエルはもっとやれとばかりに面白そうに笑っているだけだから呆れる。
「もう礼拝の時間が迫っている。早く行かねば、神の機嫌を損ねるかも知れんぞ」
一連のやり取りを呆れた様子で見ていたウリエルが助け船を出した。ミカエルはまだ不服そうな顔をしていたが、“神の機嫌を損ねる”と言う言葉を聞き、正門の方へ歩き始めた。
「来い、ガブリエル。神への礼拝くらいは大天使としての役割を果たせ」
「はいはい」
めんどくさそうに頭を掻きながらミカエルの後を追うガブリエル。
そして、大天使ミカエル、ガブリエル、ウリエルが神殿の正門の前に立つ。三人が揃ったその時、正門に絡みついた茨がスルスルと解け、ひとりでに扉が開いた。
古びた扉が重々しい金属音を響かせ、ゆっくりと開く。一瞬、朝の日差しよりも強い光が差し込み、正門の先が明らかになる。
雲一つない空に浮かぶ白亜の神殿は一つの島のようで、神殿へ続く一本道は柔らかな色彩の花々が咲き誇る。
天界に住み慣れた天使でさえ、神殿の美しさには毎回感嘆の溜息を漏らす。あのラナでさえ心を落ち着かせ、何も言わずに歩いている。
一本道を渡り終わった先、白亜の神殿に足を踏み入れると、うっとりするような溜息が所かしこから聞こえた。
神殿の内部は外から見た時よりも広く、敷物など一切ないため閑散としている。
建物内部にもかかわらず明るく、光の粒子が舞ってキラキラとしていて、反射して照らされる白い壁がまた美しい。