孤高の天使
両の手を頭上で拘束され、アメジストの瞳がこちらを見下ろす。
ドクン…ドクン……
何の感情も宿さない瞳が怖い。
ラファエル様が私にこんな表情を向けるのは初めて会った時以来のこと。
「イヴ、動くな」
ラファエルの手が腹部の側面に添えられる。
何をされるか分からない恐怖に、ギュッと目を瞑った。
しかし、ラファエルの手が伸びた先は意外なところだった。
その場所に触れた時、ハッとして身じろぎしたが遅かった。
ラファエルはベッドの枕の下に手を滑らせ、隠していたそれを取り出す。
「聖剣か」
「これは…あの………」
両手を拘束されたまま目の前に差し出されたそれは、ラナから渡された聖剣。
持て余してどうしようかと悩んだ結果、ずっと枕の下に忍ばせていたのだ。
「神が考えそうなことだ」
フッ…と怒りを含んだ嘲笑を浮かべるラファエル。
「それで?」
「え……?」
綺麗な笑みを浮かべたラファエルが私に問う。
「俺をこの聖剣で滅しないのか?」
ラファエルの言葉に息を飲んだ。
いつもは悲しそうに、けれど笑ってそう言うのに。
今日は口元に笑みを浮かべるだけで……