孤高の天使

月下の訪問者




久しぶりに夢を見た――――



何度となく見ていた夢。

私の意志とは関係なく身体は勝手に動き、いつもの場所へ座る。




『イヴ』


いつものように名前を呼ばれるけど…

やっぱり振り返ると誰もいなくて。

その瞬間、闇に囚われる。



深い深い闇の中へ―――――



けれど…一度だけ見たあの光景。

夢から覚める前の眩しいくらいの光の世界で見た一コマ。

それが目の前にあった。




闇を払う風が運んだ光の中、露わになる貴方の姿。



光と相対する漆黒の髪。

まっすぐ向けられるアメジストの瞳。

切ない微笑は最後に見た表情そのままで…




『   』


無音の世界の中、口元は確かにそう象って貴方は手を伸ばした。




ラファエル様っ……



手を差し伸べて確かに声にしたはずなのに。

その声は無音の世界に吸収された。

そればかりか、ラファエル様と私の距離は離れていく。




指先と指先がピンッと跳ねて離れた瞬間――――




『イヴッ!』



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