孤高の天使



ラファエル様の言葉を思い出し、ツキン…と胸が痛む。

けれど、気づいたら私は抱えていたフェンリルをベッドに下ろし、ふらふらと歩き始めていた。



一日中闇に包まれたこの魔界中央部では月明かりだけが頼り。

ラファエル様がいた時は淡く灯りを灯してくれていたけど、今はその灯りもなく部屋は真っ暗。

それが一層不安を助長させた。




しかし――――――


夢から覚めた後の不安。

止まらない涙。

それらが私の足を動かす。




この不安を打ち消してくれる人を求めて……



キィー……

そっと重厚な扉を開けると、長い廊下に出る。

廊下は一定間隔で小さな灯りがともされていて、真っ暗だった部屋よりはまだましだった。





“一人で部屋を出てはいけないよ”


以前告げられたラファエル様の忠告は既に頭になかった。

その言葉を思い知らされるのは僅か数分後―――



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