孤高の天使
「分かってる…分かってるけど……」
「分かってるならさっさと戻れ」
容赦ないルーカスの言葉に何も言えない。
言えるはずがない。
ラファエル様のいないあの部屋に帰りたくないと。
久しぶりに見た夢のせいか。
広い部屋に独りぼっちだからか。
間違いなく寂しいと思う自分がいた……
「ルーカス!あんまりイヴ様を怖がらせることは言わないで」
リリスの威嚇にルーカスは途端にたじろぐ。
そして、ルーカスに向けた視線とは相反する柔らかな表情でこちらを向き、リリスは口を開いた。
「イヴ様、お部屋は私たちが灯りを灯しますから」
「お望みでしたら暖炉の灯もずっと焚いておきます」
イリスが再び私の前へ手を差し伸べる。
一瞬躊躇ったが、その手を取った。
きっと、このまま廊下を彷徨い続けるより得策だから…
私が手を取ったことにホッと安堵の表情を浮かべ、お互いに顔を見合ったイリスとリリス。
「さぁ、行きましょう。ラファエル様もじき戻ってくるはずですわ」
何も知らないイリスは柔らかな笑みを浮かべてそう言う。
ズキッ……―――――
もう…戻らないの……
ラファエル様はもう戻っては来ないの。
そんな想いを胸に抱きながら、部屋への道を重い足取りで歩いた。