孤高の天使
「どうしたんですか?」
顎に手をあてたっきりその場を動こうとしないアザエルにそう呼びかけた。
聞かなければ梃子でも動かない気がしたから。
すると、アザエルは困った表情をしたまま答える。
「実は買い物を頼みたくてね。いつもルーカスか侍女たちに頼んでいたのだが…そうか、今日はいないのか」
買い物……と言うことは城下町に出るのかな。
「私が代わりに行きましょうか?」
「良いのですか?」
驚いた様子のアザエルにコクンと頷く。
ここ数日、外に出ようと言うルーカスたちの誘いを断ってずっと部屋に籠っていたし。
少し、外の空気を吸いに行きたい気分だった。
外に行くときは一人で行っちゃダメだと言われているけど、フェンリルがいるし。
目的のものを買ってすぐに帰ってくれば大丈夫よね。
「ありがとうございます。買ってきてもらいたいものと店のリストはここに」
手渡された紙にはメモと店のリストが載っていた。
書かれていた品はどれも聞いたことのないものばかり。
紙とにらめっこしていると…
「大丈夫です。メモを見せて私の使いと言えばすぐに品を出してくれますから」
「分かりました」
メモを持って立ち上がる。
「フェンリル」と部屋に呼びかければトコトコとどこからともなく駆け寄るフェンリル。
そのまま出かけようと思っていた時。
「ルシファー様に外出することを伝えなくとも良いのですか?」
アザエルの言葉にドキッと心臓が跳ね、思わず足を止めた。