孤高の天使
「…………」
「ルシファー様と何かあったのですか?」
何も言わずに立ち止まった私に、アザエル様が後ろから呼びかける。
「いえ…何も……ただ、私を天界へ帰す為に距離を置くと…」
すると、アザエルは驚きつつも面白そうに「それは予想外ですね…」と口にする。
「ルシファー様は貴方にとても入れ込んでいたようでしたから」
「それは違います…」
ツキンと、また一つ胸に積み重なる痛み。
口にすれば痛みを伴う諸刃の剣のような言葉と知っていて口を開く。
「ラファエル様が求めているのは“イヴ”と言う名の別の人だから…」
ズキン……―――――
胸にずしりと重い痛みが走る。
ラファエル様が“イヴ”と呼ぶたびにどこか他人事のように返事をしていた。
彼女のおかげで、魔界でもこうして生き延びることができているのに。
“イヴ”に向けられるラファエル様の柔らかな表情や優しい声にいつしか甘えていたのかもしれない。