孤高の天使
今更になって胸を突き刺す痛み。
だからと言って“イヴ”に成りすますのも悲しい。
結局…私は私の在るべき場所“天界”へ帰るのが一番良いのだ。
「何にしても…私はラファエル様の決断を待つだけです」
自分自身に言い聞かせるように言った言葉が胸を痛める。
「そうですか。私もルシファー様が正しい決断をしてくれることを願うばかりです」
「え?」
独り言のように小さな声で呟かれた言葉に、アザエルを振り返る。
しかし、ニッコリと笑顔で「なんでもありません」と返された。
本当につかめない人……
「城下町は夕刻です。日が暮れる前にそれを頼めますか?」
人差し指で私が握っている紙を指差すアザエル様。
それに慌てて「はい」と返事をし、やっと何のためにソファーを立ち上ったか思い出した。
「フェンリル」
部屋に呼びかけると、どこからともなくフェンリルがひょこっと現れる。
首をふるふると振り、口を大きく開けて欠伸をしているところを見ると寝ていたのだろう。
起こしてしまって申し訳ないと思うが、ルーカスたちはいないし、飛んでいくわけにもいかないから頼れるのはフェンリルしかいない。