孤高の天使



「行ってきます…ラファエル様」


抱きしめていたのは一瞬。

別れの寂しさを言葉にしてしまうと決意が揺らぎそうで…

一言だけそう告げてラファエルに微笑んだ。

すると、ラファエルも安堵の表情を浮かべて一言「あぁ」と言った。





「俺はずっと待っている」


笑ってそう言ったラファエルに私は込み上げる涙を抑えながらコクンと頷く。



そうして私は魔界を後にした―――







「イヴ…その……大丈夫か?」


魔界を出て人間界に出た頃、私を抱えたルーカスが遠慮がちに口を開いた。




「どうしたの?急に」


ルーカスらしくない歯切れの悪い物言いに、少し驚きながら問い返す。

訝しげな表情をして見上げれば、ルーカスは慌てて顔を逸らした。




「いや…大丈夫ならいいんだ」


そう言ったっきりまた黙り込む。



あ…そっか……

理由が分かりふわりと笑う。



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