孤高の天使



大きな窓に背を預け、腕を組んで窓の外をじっと見つめるのはとても会いたいと願っていた人。

蒼月の月光を浴びるその人は幻想的でいて危うげな雰囲気を醸し出していた。

ルーカスが部屋に入ってきたと言うのに窓の外を見たまま動かない。





『ルシファー様』


ルーカスが口だけを動かして呼びかける。

すると、やっと視線を動かしこちらに視線を寄越す。

向けられたのはアメジストの様な輝きを持つ瞳。



ラファエル様……

目が合ったかのような錯覚に胸が高鳴り、アメジストの瞳に囚われる。

しかし、当然その視線は交わることはない。

ラファエルの瞳がルーカスを捉え一瞬驚いたような表情をしたかと思えば窓に預けていた背を離し、こちらへやってくる。




『ルーカス、帰っていたのか』


先ほどの横顔とは打って変わって表情が和らぐラファエル。

少し急ぎ足とも取れる足取りでルーカスに近づき…




『イヴは無事に天界へ着いたか?』


ラファエルの様子から私のことを本当に心配してくれていることが伝わる。




『どうなんだ』


答えを渋るルーカスを急かすラファエル。

いつもは冷静で落ち着いているのに、今は何も言わないルーカスに苛立ちを感じているようだった。




『イヴは……』


そう言ったっきり口を閉ざすルーカス。

視線を逸らし眉根を寄せるその表情は、取ってはりつけた様に哀しみを表していた。

先ほどの虚ろな表情を見ていただけにそれが作り物の様な感じを受けたが、ラファエルはそう受け取らなかったようで、苛立ちから一変して焦りの色が現れる。



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