孤高の天使


『はい…急所は外れていたはずなのですが、イヴの生命はあっという間に奪われました』


ルーカスはラファエルの言葉など気にすることもなく、話を続ける。




『俺もまた同じように襲われ、人間界へ堕とされました。俺は傷が浅かったからか、抵抗する余裕があったからか、こうして逃げかえってこれたのです』


そう言ってボロボロの衣服を握るルーカス。

そして、その懐から何かを取り出す。





『これを……』

『ッ……!』


ルーカスが取り出したものを見てラファエルが息を飲む。

金の装飾がされたそれは“聖剣”だった。




思わず腰に手をやるが、やはりそこに有るべき聖剣はなかった。

ルーカスが持っている聖剣は間違いなく私がラファエルからもらったものだった。

ラファエルは僅かに震える手でルーカスからその聖剣を受け取る。






『その天使たちは白いフードをかぶっていたか?』



ギュっと聖剣を握り締め、絞り出すように声を上げて問う。

哀愁の色を乗せたアメジストの瞳でただ聖剣を見つめながら。

そんなラファエル様を前に、ルーカスは声を落として答える。





『確かに、俺たちを襲った天使たちは皆フードを被っていました。深く被っていて顔は見えませんでしたが…』




ダンッ…―――――

ラファエルの拳が机に打ち付けられ、大きな音が部屋に響く。



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