孤高の天使
「貴方は一体……」
落ち着いた口調と雰囲気はとうてい幼い少女のものとは思えない。
少女はフッと柔らかに笑い、口を開いた。
「名は遠の昔に捨てましたが…今は “神”と呼ばれているものです」
「神様ッ!?」
今まで冷静だった私もさすがに声を上げずにはいられなかった。
神様と言ったらミカエル様のように厳格で見た目も成熟した人を想像していたのに、予想は見事に打ち砕かれた。
なにより―――――
「なぜ神様がこんなところに…神様は天界にいるはずです」
「私が天界に?」
神と名乗った少女は目を丸くしたかと思えば途端にクスクスと笑う。
「では貴方は神の姿を見ましたか?」
「それは…神様は大天使長のミカエル様しかお会いできませんから」
言葉に詰まった後、教えられたとおりの事を口にした。
「私の事を神ではないと思うならそれはそれで構いません。今はもう実質的に神ではありませんし」
独り言のように小さくそう言って少女は困ったように笑う。
その表情があまりにも切なく、悲しそうで何と声をかけて良いのか分からなかった。
「私はずっとここに囚われていたのです。そして、イヴ。見慣れないかもしれませんがここは天界ですよ」
ここが天界?
改めて周りを見回しても天界に特有の光の粒子は舞っておらず、天界と言われても腑に落ちない。
けれど、言われてみればからっぽだった聖力がゆっくりだが回復しているのがわかる。