孤高の天使
「貴方が神様だとしてここが天界なら、何故神様がこのようなところに閉じ込められているのですか?」
「私がここに囚われた理由を話すには、少し時間がかかります。…そして、それは同時に貴方の過去に関係することでもあります」
再度素直な疑問をぶつけてみると、少女は先ほどより一層眉を寄せて悲しい表情をした。
「私の過去?」
「はい。正しくは貴方の消えた記憶ですが」
その言葉にピクリと反応した私を少女は逃さなかった。
「聞きたいですか?私がここに囚われた理由を。そして、貴方の消えた記憶を」
この少女も私を“イヴ”と思っているのではないだろうか。
否、それでも聞きたい。
もう私と“イヴ”は何の関係もないとは言えないから。
ラファエルと少女の言う消えた記憶が同じとは限らないけれど、聞きたいと思う気持ちのままに私は頷いた。
「では、こちらに。私はここから動けませんので」
少女は樹の根元に座ったまま小さな手を私に差し出す。
訝しげに思うも、今は消えた記憶の事を知りたいという気持ちが勝り、何も言わずに少女の目の前まで歩いて行った。
地面に広がる金色の髪を踏まないように気を付けながら少女の前まで来て座る。
「手を取りなさい」
スッと差し出された手は私の手よりも一回り小さく、透き通る様に白かった。
そして、意を決してその手を取った――――