孤高の天使
天使の向かう先に視線を移すと、階段に座っている天使がもう一人。
否、あれは天使なのだろうか。
背には左右三枚の羽根、そして背中に流れる長い髪は羽と同色の漆黒。
その容姿は天界において異彩を放っていた。
そんな容姿をしている者は一人しか知らない。
まさか…けどそんなことはありえない…
頭に浮かんだ可能性を打ち消しつつも、思い当たる人など一人しかいなくてドクンと心臓が大きく鳴る。
正門から出てきた四枚羽の天使は階段に座る天使を見つけるなり、一気に階段を下りていく。
そして、一気に階段を駆け下りながら嬉しそうに声を上げる。
『ラファエル様!』
『イヴ』
ッ……!
嬉々とした声に応えるように振り返った六枚羽の天使が目に入った瞬間息を飲んだ。
そして抱きついた四枚羽の天使の顔が目に入る。
四枚羽の天使は私に似通った…否、生き写しと言っても良い程そっくりな顔つきをした少女。
すぐにそれが“イヴ”だと分かった。
そして、階段を駆け下りた“イヴ”を抱きとめた天使はラファエルだった。
紅の瞳に漆黒の髪。
見間違えるはずなんてない……
けれど…――――
少女は私の封じられた記憶と言ったが、あの“イヴ”は本当に私なのだろうか。
「貴方とラファエルです」
動揺が顔に出ていたのか静かに口を開いてそう言った少女。