孤高の天使
『神と言う存在は永遠に等しい。その長い年月を過ごしていれば、欲が出るのも不思議ではあるまい』
ラファエルと天使から目を離して神に真実を求める視線を送れば、神は首を横に振って否定した。
“負の感情は誰もが持っているもの”
頭にフッと浮かんだ考えが杞憂に終わって良かった。
冷静に考えてみれば神がラファエルを陥れようと思っていたのならあのような空間に捉えられているはずもない。
この天使はラファエルに嘘を吹き込んでいるのだ。
そしてきっと陰で糸を引いているのはアザエルとミカエル。
ミカエルが聖力の強いこの四枚羽の天使たちを集め、アザエルの能力で操っているのだろう。
しかし、そんなことを知る由もないラファエルは天使の首に指を突き立てたままただ俯く。
そんなラファエルに天使は更に追い打ちをかけた。
『神は私たちに命じた。お前を自分の前に差し出せと。この先も神の地位に就き続けるためには聖力が必要だったからな。しかも莫大な聖力が…』
『それで俺を襲ったということか』
自嘲とも取れる笑みを零すラファエル。
『イヴはそんな事の為に死んだのか?そんなくだらないことの為に…』
掠れて震える声がやがて憎しみに変わる。
天使の首を掴んでいた手がギリッと食い込んだ。
『グッ……』
天使は苦しそうな声を漏らすも、先程のような命乞いはしない。
恐らくこれもアザエルとミカエルの思惑通りのことだろう。
その証拠にラファエルを“煽る”という目的を果たした天使はもう抵抗しなかった。