孤高の天使
漆黒の六枚羽と闇のように真っ黒な髪。
今までと同じ色彩だというのにどこか異様な雰囲気を醸し出していた。
こちらに背を向けていたラファエルは膝を折ってゆっくりとしゃがむ。
大きく広げられた六枚羽が邪魔をして何をしているのか分からない。
けれど、何か嫌な予感がした。
ゆっくりとラファエルの正面に回り込む。
そして目に飛び込んだ光景に目を見開いた。
ラファエルは地面に落ちた魔剣に手を伸ばそうとしていたのだ。
「だめッ!」
咄嗟に駆け寄り魔剣を掴もうとするラファエルを止めようとするが、私の体はラファエルの体をすり抜けて行った。
ここは数百年前の記憶の中であり、この時間を生きる者に触れられるわけがない。
そうしている間にもラファエルは地面に落ちた魔剣を拾い上げそのまま自分の胸へその切っ先を向ける。
イヴがしたように……
ラファエルが何をしようとしているのかは一瞬で分かった。
「だめ…ラファエル様ッ!」
叫んだ瞬間、ラファエルは魔剣を自分の胸に突き立てた。
ドンと私の心臓にもその振動が伝わってくるかのような感覚に息を飲んで立ち尽くした。