孤高の天使



「辛かったですね」


労わるような神の声に弱々しく首を横に振る。





「辛いのは…私じゃない…っふ……」


嗚咽交じりの声で紡ぎだす言葉はかろうじて神に伝わった。

神は何も言わずに私の言葉を待つ。





「わたし…ラファエル様にたくさん…酷いこと言った」


誰に言っているわけではない、誰に許されたいわけでもない。

ただ何も知らなかった自分が許せなくて、苦しくて、吐き出すように言葉にした。





「ラファエル様はずっと私を愛してくれていたのに、私は…貴方の事なんて知らないって。貴方の“イヴ”じゃないって…」


そんなことどうしようもない事だったということは分かっている。

記憶自体を消されていたのだから。

けれど分かっていても後悔ばかりが口から出るのだ。

そうしなければこの辛くて哀しくて悔しい気持ちを逃がす場所がなかった。





私がひとしきり泣いた後、神はすすり泣き程度に治まった私の背を撫でながら口を開いた。



「これから貴方はどうしたいのですか?」


耳元で神が優しく私に問う。

私はきゅっと口を結び、縋り付くように抱きついていた神と距離を取る。

涙の痕が残る頬をグっと拭き、スカイブルーの瞳を見据えた。





「私はラファエル様の元へ行きます」


涙声の残る声色で、けれどはっきりとした意志を伝えた。

ラファエル様は今また私を失ったと思っている。

また絶望の淵に立たされている。




< 298 / 431 >

この作品をシェア

pagetop