孤高の天使



「ミカエル様は何故神につけなかったのですか?」

「神候補の大天使が欠けてしまったからです。次期神が決するのは大天使四名が集まった時。大天使四名の席が埋まらずに神が死を迎えれば私の力は受け継がれません。だからミカエルは私を生かしていたのです」


だから数百年もの間、神をこんな空間に閉じ込めたのね。

そしてその間、ミカエルは不本意ながらも大天使候補を探していたのだ。

自身が次期神となるよう慎重に…





「しかしミカエルには大きな誤算がありました。それが貴方ですイヴ」

「私?」


思わぬ言葉に耳を疑う。




「本来ならば一度滅した天使は再天しないはずが、貴方はまた天使となって聖なる母樹から生まれてきました。しかも四枚羽の天使として。それが指す意味が分かりますか?」


少し早くなる口調と緊張の面持ちで話す神に言葉が出ず首を横に振った。




「ミカエルは四枚羽の天使として生まれ変わった貴方がまた大天使に…そして神の座に就くと思っていました」

「ッ…!」


私は神の言葉にハッと息を飲み、やっと神の言わんとすることが分かった。

ミカエル様は生まれ変わるはずのない私が再天し、しかも前世と同じ四枚羽を持って生まれてきたことに危機感を抱いていたのだ。

かつて大天使であり、最も神に近かった四人のうちの一人であった私に神の座を奪われやしないかと。





「けど…昔の私は大天使でしたけど、今は長時間飛んでもいられないほど聖力が小さいのですよ?」

「それもまた必然です。貴方の聖力は再天した時にミカエルによって封じられているのです」


神は私でさえ知らない事実を淡々と話してゆく。



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