孤高の天使
「ミカエルよりも危険視すべきはアザエルです。彼もまた神の力を羨望し憎しむ者の一人ですから」
どこか意味ありげな含みを持たせてそう言った神にふと疑問を抱いた。
「神様はアザエル様の事をどこまで知っているのですか?」
先ほどの記憶の中でアザエルとミカエルが映ったということは私か神の記憶であることは間違いない。
記憶を封じられていた私があの光景を記憶していたということはないだろう。
つまりあれは神の記憶であり、神はこの場所に囚われる前にミカエルかアザエルからあの裏切りの発端ともなったやり取りを見聞きしたのだ。
そうでなければあの光景は見せられないから。
だからきっと神はアザエルの事を知っているのだろう。
そう思ったのだが――――
「私はアザエルの全てを知っています」
返ってきた答えは予想とは少し違った。
そして神は衝撃的な言葉を投下した。
「アザエルは私が魔界へ堕とした者。もとはと言えば天使だったのです」
「アザエル様が…天使だった?」
次から次に明かされる真実についていけない。
「アザエルだけではありません、魔界に住む者はほとんどが堕天した天使です」
「それは魔界で聞きました。何故堕天したかは教えてくれなかったけど…」
声を落とした私に神は「それはそうでしょう」と口にした。
「彼ら自身も何故堕天したのか分からないのですから」
「それはどういう事ですか?」
堕天する者は取り返しのつかない大きな罪を犯した者。
自分の犯した罪を忘れている訳でもないだろうに、何故堕天したか分からないなどあるのだろうか。
浮かんだ疑問に首をひねっていると神は静かに話し始める。