孤高の天使
「魔界に堕とされた天使の多くは、ミカエルにとって邪魔な存在でした。聖力の強い者、ミカエルにたてつく者…とにかくミカエルは自身が神の座に就くために妨げとなる者を堕天させて行きました」
ミカエルは私たちだけでは飽きたらず、神の座に近い者や自身が神の座に就くために邪魔な存在を消していったのだ。
その中にルーカスを始めあの魔界で暮らしていた堕天使たちがいた。
魔界にもかかわらず陰鬱な雰囲気や好戦的な悪魔がいなかったのはそのためだろうか。
「けどどうやって?ミカエル様が表だって行動するのは難しかったんじゃ…」
そこまで考えてふと我に返る。
「ッ!もしかして…」
息を飲んだ私に神は深刻な面もちで頷いた。
「そうです。アザエルはラファエルを堕天させた後もミカエルに協力し続けていたのです」
「あれはアザエル様の気まぐれだったんじゃないんですか?」
「いいえ、気まぐれではありません。アザエルの目的はラファエルではなく神である私だったのですから」
もう何が何だかわからなくなってきた。
「アザエルは私を恨み、私を滅したいと思っています。けれど神の座に就きたいミカエルにとっては私という駒は必要。だからこの亜空間に私を封じてアザエルから遠ざけているのです。恐らくアザエルには自分が神の座に就けば私を引き渡すとでも言っているのでしょう」
今の話を聞いていると、必ずしもミカエルとアザエルが協力関係にあるわけではなさそうだ。
神の座から引きずりおろすという点では同じだが、神を滅したいアザエルと自分が神になるまで生かしておきたいミカエルとの攻防があったのだろう。