孤高の天使
トクン……―――――
イヴの胸が再び呼応し、頬に熱が集まった。
(なんだろう…この人の笑顔なんだかほっとする)
心の奥底にぽっと灯りがともる様な温かな気持ちにイヴは戸惑う。会ったばかりの、しかも魔界の王に安堵にも似た気持ちを抱くなど戸惑うほかない。
「ルーカス、イヴに服を用意しろ」
「はい!……って、えぇッ!?」
魔王の命令は絶対なのか、ルーカスの開口一番は肯定しかないようだ。勢いよく返事をしたものの、数秒後驚きを露わにした。キーンと耳鳴りがするほどの声を上げたルーカスにラファエルは溜息を吐く。
「騒がしい奴だな。イヴに侍女をつけ着替えの服を用意しろといったんだ」
いよいよ私を魔界へ住まわせる気のラファエル。侍女などつけられたら監視されて動けなくなると感じたイヴは反論の声を挙げたかったが、それよりも前にルーカスが口を開いた。
「お言葉ですがルシファー様、こいつをここに住まわせる気ですか?四枚羽の天使ですよ?」
「今回は特例だ。それからルーカス……」
ラファエルの瞳がスッと細まる。途端、先ほどまで威勢の良かったルーカスがビクッと肩を揺らした。
「“そいつ”ではなくイヴだ。イヴに何かあれば…わかっているな?」
含みを持たせた言葉にルーカスがゴクリと唾を飲み込む。
「分かったのならさっさと動け」
「は、はい!」
ピシッと体を硬直させ、反射的に返事をするルーカス。返事をしてしまったことで諦めたのか、非常に不本意な様子で踵を返す。そして、部屋を出て行こうとするが、数歩歩いてイヴがついてきていないことに気が付いて振り返る。
「ほら、行くぞ」
やや苛立った様子のルーカスにイヴは不安げにラファエルを見上げる。