孤高の天使
それでも必死にもがき伸し掛かる重力に反発しながら飛んだ。
「あともう少しだっ…イヴ頑張れ!」
ルーカスのその言葉が後押しし、全ての力を絞り出して手を伸ばした。
パシッ…――――
指先がルーカスの手に触れる寸前で、ルーカスが穴から身を乗り出し私の手を掴んだ。
そしてグイッと引っ張られる感覚が襲ったかと思えば、結界の中から引きずり出された。
「ハァ…ハァ……」
聖力を使い切った私と結界を抑えていたルーカスは息を切らして地面へ倒れ込んだ。
俯せで倒れ込んだ先は柔らかな草と花、そして僅かに光の粒子が舞っていた。
私の横で仰向きになって荒い呼吸をするルーカス。
「ルーカス…何でここに…アザエル様に操られていたんじゃ…」
息を整えながら起き上がり、先ほど聞けなかったことを口にする。
するとルーカスは顔を覆っていた手を取り払い、こちらを向いてフッと笑った。
「そいつらに助けられた」
私の斜め左後方に移されたルーカスの視線。
その視線を追って振り向いた瞬間、視界いっぱいに移った亜麻色。
「「イヴ様ッ!」」
「おいっ…!」
ドンッという衝撃によろけそうになるが、その背をルーカスが支えてくれた。
「あぶねぇ…お前らちょっとは落ち着け!」
「「これが落ち着いていられるの!?」」
勢いに任せて叫んだルーカスに息の合った返事が返ってくる。
示し合せた様にぴったりと合う言葉は双子だからだろうか。
セピア色の瞳に涙を浮かべながらルーカスを睨んでいるのは侍女のイリスとリリスだった。