孤高の天使



「イヴは渡さない。ルシファー様の元へ連れていく」


両手を広げて私をかばう背は頼りないくらい小さかったはずなのに、今はとても広く見える。




「魔王の飼い犬ごときが大口をたたかないことですね。私の能力が操るだけだと思っているのですか?」


アザエルが溜息を零し、瞬きをするその一瞬で目の前にいたアザエルが残像も残さず消えた。

そしてその跡を追おうと辺りを見渡そうとした時。



「きゃッ!」

「イヴ!」


不意に後ろから腕が伸び、腰と肩に手を回された。

アザエルの腕はほっそりとした見た目からは想像できないくらい強かった。

後ろから羽交い絞めにしていたが、フェンリルの背を離れこちらに来るルーカスを見てアザエルはフッと笑った気がした。

瞬間、アザエルが何をしようとしているか悟りハッとする。






「ルーカス!来ちゃだめ!」

「一度ならず二度までも、本当に貴方は学びませんね」


囁くように呟いた声と共にアザエルがパチンと指を鳴らす。

するとどこともなくルーカスの背後に円形の印が浮かび、その印から四枚羽の天使が現れた。




「なッ…どこから…クソッ!」


音もなく現れたその四枚羽の天使に警告する間もなくルーカスは捉えられる。




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