孤高の天使
魔王と冥王
ルーカスに連れられた部屋でイヴはまたもや困惑の真っ只中にいた。
「イヴ様にはシックなドレスの方が似合うわ」
「いいえ、スタイルがよろしくていらっしゃるからこっちよ」
イヴは今、双子の侍女の着せ替え人形と化していた。
ことの始まりは数分前…―――
ルーカスに連れられて侍女の部屋へ行くと、待ち受けていたのは可愛らしい双子の悪魔で。悪魔に使える侍女と聞いていたため、天使の侍女に使えるなど不本意ほかならず冷たい態度を取られることを覚悟していたが、実際の反応は随分違った。
部屋に入ってきたイヴを見るなり可愛らしい目を瞬かせ、ルーカスからラファエルの客人だと聞くや否や、ルーカスを撥ね退けんばかりの勢いでイヴに駆け寄った。
「久しぶりのお客様よ」
「どこからいらっしゃったんですか?」
「魔王様とはどのようなお知り合いで?」
などと、終始質問攻めだった。双子だからかテンポも声もしゃべり方も一緒なのだが、二人の意見はことごとく違っていた。
「イヴ様はどっちのドレスがよろしいですか!?」
グイッと顔を寄せる双子の侍女。
「えっと……」
「遠慮はいりませんわ!選んでくださいませ」
「そうです、イヴ様が決めてくだされば文句はありません」
とは言われても、どちらを選ぶにせよ片方の落胆ぶりが目に見えているから選びにくいイヴだった。今ならルーカスとフェンリルがそっと部屋を出て行った理由が分かる。
「「さぁイヴ様!」」
丸く可愛らしいセピア色の瞳がイヴの答えを急かす。
「じゃ、じゃぁ……間を取ってこれがいいわ」
そう言ってイヴが手に取ったのは二人が選んでくれたドレスとは異なる種類のものだった。派手すぎず地味すぎず、どこか気品のあるシンプルなドレス。
全くといって間を取っておらず、双子の反応が気になったが、イヴの心配は杞憂に終わった。