孤高の天使

未来の約束



暗い暗い闇の中――――

瞼が重くて目を開けられないけれど、閉じていても一片の光さえ感じない瞼の外は闇の世界なのだろう。

頭はぐるぐると回転するように気持ち悪く、押しつぶされそうなほどの圧に襲われながら空間を落ちてゆく。


今までの空間転移はものの数秒で目的の場所まで飛んでいた。

けれど今は時が止まっているのではないかと思うくらい転移の時間が長く感じる。

やはりルーカスとフェンリルの魔力だけでは不完全だったのだろうか。

満身創痍だったし、場所が場所だけに十分な魔力が発揮できなかったのかもしれない。



空間転移が失敗すれば、空間の狭間に閉じこめられると聞いたことがある。

そういえばさっきから体を圧迫するような重みがなくなった。

頬に感じる風は生温かくて、まるで泥濘にからだが飲み込まれてゆくようだ。




このまま時間の狭間に閉じこめられるのだろうか…

まどろむような誘いに意識が遠のきそうになったその時ハッと我に返る。

ルーカスが言っていたではないか”強く想え”と。



転移とは空間と空間をつなぐもの。

それには対象がなければならない。

アメリアの時は城、アザエルの時は神のとらわれた異空間。

思えば空間移転は何らかの繋がりをもった場所や対象にしかできないのではないだろうか。

そしてそれは空間移転先と繋がっているともいえる。




それが意味することは――――



< 352 / 431 >

この作品をシェア

pagetop