孤高の天使
天界の中で誰よりも厳格だったミカエル。
それ故に今までの所業がばれ、相当焦っていることだろう。
しかしミカエルは口元に薄ら笑いを浮かべ、口を開いた。
「神はお前に何と説明したんだ?」
「ラファエル様を陥れたのはミカエル様とアザエル様だと言っていました。そしてそうさせたのは自分のせいだと」
神はミカエルの変化に気付かなかったことを本当に後悔していたのだと思う。
否、全ての息づく者たちを愛する神様だからこそミカエル様が裏切ったことがショックだったのだろう。
「神様は決してミカエル様を見ていなかったわけじゃありません。神様はきっと危なっかしいラファエル様を放ってはおけなかっただけ。ミカエル様も天界でのラファエル様の立場を知っていたでしょう?」
記憶が戻った今、何故神がラファエルの事を気にかけていたのかが分かる。
ラファエルは天使だというのに漆黒の羽と髪をもって生まれた。
天使にとって黒とは悪魔の象徴であり、ラファエルが天界に来た頃は皆恐れていたものだった。
けれどそれも最初の内だけ。
皆ラファエルが無害だということが分かるや否やあからさまに態度を変え、「悪魔」などとののしられたこともあった。
そしてラファエルも皆と関わりを持とうとはしなかった。
自分が漆黒の色彩を持ち、六枚羽に嫉妬と羨望を向けられていることを自覚していたのだ。
異例のスピードで大天使まで上り詰めたラファエルの敵は多かった。