孤高の天使
本人は皆からどう思われているかなどおくびにも出さなかったから尚更神も心配していたのだろう。
「ラファエル様に罪はありません。それでもまだラファエル様を滅するつもりですか?」
「こうなった今、ラファエルは消さねばならない。全てはラファエルの哀れな魂を救った神のせいだ。恨むなら神を恨め」
ミカエルは何の躊躇いもなく口の端を持ち上げて笑って見せた。
「そうやって全て神のせいにして何の罪もない人を傷つけるのは間違っています」
ミカエルの目を見据えながらきっぱりと口にする。
少し前までなら視線を合わせるのも恐れ多くて、ミカエルの前ではいつも萎縮していた私がだ。
あの頃はミカエルの私に対する冷たい態度や、何かにつけて目をつけられていたことがそうさせていたのかもしれない。
けれど今ミカエルから恐怖や圧力を感じないのはきっとラファエルがいるから。
ラファエルを守りたいと思う気持ちが私を強くしている。
だから一時だって目を逸らさない―――
「お前も私に説教をするのか?」
ミカエルの表情からサッと笑みが消えた。
地の底を這う様な声は怒りを湛え、口にした言葉は震える。
「説教をしているつもりはありません。私はただ私の考えを述べたまでのこと。それに…ミカエル様が私をどう煽ろうと私は誰も恨まない」
ミカエルもアザエルも、もちろん神も。
怒りは感じれど恨んだり憎んだりしてはならない。
その果てにあるのは虚しくて哀しい感情だけだから。