孤高の天使
ドンッ―――――――
「きゃッ……!」
何かにぶつかり、派手に転げた。
ぶつかった先を見上げれば、そこには綺麗な女の悪魔がいた。
見た目は若く、私と同じくらい、もしくは少し年上。
真っ白な肌に黒のドレスが映える美女だった。
肩まである艶やかな巻き髪。
ガーネットを思い起こさせる鮮やかな紅い瞳を持った悪魔だった。
その悪魔は、二枚の羽で空に浮いた状態で衝撃を緩和したからか、涼しい顔をしてこちらを見下ろしている。
そして、私の後ろにあるラファエルの部屋と私を交互に見て…
「あなた…誰?」
スッと細まる鮮やかな紅い瞳。
明らかに敵意を持つ瞳に思わず口ごもる。
瞬時に分かった。
彼女はラファエルと何らかの関係があるのだと。
しかも、彼女にとって私はあまりよろしくない立場にいることに。
「えっと……」
「何故ルシファー様の部屋から出てきたの?あの部屋にはルシファー様の許可なしには入れないはずよ。」
ストンと床に降り、羽をしまう悪魔。
じっと睨まれる視線には、羨望と嫉妬とが入り乱れていた。
「私は昨日ルーカスに拾われて、行く場所がなかったからここに。」
言葉を選びながら話す。
ラファエルの名は出さないほうがよさそうだと思った。
…と言っても、この状況はどう見てもラファエルの部屋から出てきたところ。