孤高の天使
天使にとって羽の数は地位を表す上で重要なものだ。
羽が大きく、数が多いほど聖力が強く、聖力が強いほど地位も高くなる。
イヴは天使として天界に生まれ変わった時にはすでに四枚羽だった。
四枚羽を持つ天使は一握りであり、皆が敬意を示す対象だが、イヴに対する皆の眼は冷たいものだった。
「四枚羽のくせに下位天使なんて恥ずかしくないのかしら」
「しょうがないわよ。天使は天使でも飛べない天使だもの」
先程とは別の方向から聞こえてきた声は明らかな嫉妬が含まれたものだった。
責める様な言葉を向けられたのは、きっと下位天使のくせに四枚の羽があることが気にくわないのだろう。
けれど、それだけではない。イヴは四枚羽を持っていながらその位は下位天使だった。
飛べない天使とは中らずと雖も遠からず、聖力が小さいために長時間飛ぶことも出来ない。
毎朝の礼拝も神殿から一番遠い下位天使の家からここまでラバルに送ってもらう始末だ。
と、ここまでなら四枚羽を持っていながら下位天使に落ちぶれている哀れな天使として嘲笑われるだけで済んでいたのだが…。
「イヴ」
凛とした声が聞こえてきた上空を見上げ、逆光の中、広げられた四枚羽の天使が下りてくるのを目で追った。
ふわりと階段に降り立ったのはイヴ同様、四枚羽を持った天使だった。
「ウリエル様!」
先程まで悪魔もたじろぐ形相をしていた天使たちの目が輝き、黄色い声が飛び交う。
ウリエルと呼ばれたその天使は、自身に向けられる黄色い声に笑顔で応えながらイヴに歩み寄った。
「おはようございます、ウリエル様」
「おはよう、イヴ」
イヴの髪の毛をクシャっと撫でながら、太陽の様に笑うウリエル。瞬間、再び嫉妬が入り混じった視線が集まるのが分かった。