孤高の天使



悪魔の生の根源―――――

とても知りたかった。



しかし………




「それは……また今度な。」


ルーカスらしくない、とても歯切れの悪い答えだった。

一瞬見えた憂いを帯びた表情に、ぐっと言葉が詰まる。

聞いてはいけない何かがあるのだろう。

前を飛ぶルーカスの表情は見えないけれど、これ以上聞くなと背中に書いてある。



なんとなく、妙な空気が流れ暫く沈黙の時間が続き、息も詰まりそうになってきた頃。





「城下が見えてきたぞ。」


ルーカスの声に弾かれたように顔を上げる。

そして、目の前の光景に息を飲んだ。

迷いの森を抜けたその先には“地”がない。

城と悪魔貴族の屋敷があるこの居住区は一つの島となって浮いていたのだ。



見えるのは一面の青い空と遥か下に見える城下。

そして……音もなく流れ落ちる“闇”





「ルーカス……あれは何?」

「行けばわかるさ。」


もうすぐそこまで迫った絶壁に体が逃げたいと叫ぶ。

しかし、ルーカスの後を追うフェンリルの速度はおちることなく…





ヒュー……――――――


「ッ………!」


下から吹く風に煽られ、フェンリルが一瞬揺れる。




< 62 / 431 >

この作品をシェア

pagetop