孤高の天使
「そうね。私も今はこれをつけられていて魔界では飛ぶこともできないし。」
そう言ってうっとおしそうに首につけられた輪を指で引っ張る。
きっと聖力を無効にするような道具なのだろう。
「そもそも、魔界から脱出するには魔王の力なしにはかなわないみたい。天界につなぐ路は魔王が作ったようだから。」
ラナのフンっと相手をけなす態度は魔界にあっても変わらずだった。
けれど、その事実を聞いて軽くなっていた心が再び沈む。
「やっぱり天界へは戻れないの?」
眉を寄せて小さく呟けば、ラナが「大丈夫よ!」と明るい声で言う。
そして、白い服の懐をごそごそとあさり、布に包まれた細長い何かを取りだす。
「神からこれを預かったわ。正確にはミカエル様からだけど。」
ズイッと差し出すそれを受け取り、布を剥がしていく。
すると、琥珀石がはめ込まれた金色の短剣が現れた。
「これは?」
細かな細工が施されてて綺麗な剣。
装飾品かしら……
そう思って見つめていれば――――
「聖剣よ」
少し低い声になったラナがそう言う。
聖剣……?
聖剣と言えば、神力が施された言わば聖力が結集された剣だ。