孤高の天使



「イヴ…辛いと思うけど一人の、しかも魔王の命ひとつで世界が救えるの。よく考えて。」

「ラナ……」


私の手を取って真摯な瞳でそう言うラナに戸惑う。

答えを出しかねてまごついていると…




「オイ!」


扉の外からルーカスが叫ぶ。




「分かってるわ。すぐに行く。」


ラナが苛立ちを隠さずに扉に向かって叫び、再び私の方に向く。

ギュッと私の手を握り口を開いた。




「イヴ、天界で待ってるわ。」


その言葉に、眉を寄せながら躊躇いがちにコクンと頷いた。

私がやっと意志を示したのを見て、ほっとしたような表情をするラナ。




「じゃぁ、私は先に帰るわね。」

ゆっくりと離れる手。

ラナが部屋から出て行こうと扉に手をかけようとした時。




「ラナ!」


呼び止めたラナが振り返る。

そして、ずっと気になっていたことを聞くために口を開いた。




「ラナは魔界に来るのは初めてよね?」


私の質問にパチパチと目を瞬かせるラナ。

そして「当たり前じゃない」と言ってクスクスと笑いだす。



< 98 / 431 >

この作品をシェア

pagetop