孤高の天使
「イヴ…辛いと思うけど一人の、しかも魔王の命ひとつで世界が救えるの。よく考えて。」
「ラナ……」
私の手を取って真摯な瞳でそう言うラナに戸惑う。
答えを出しかねてまごついていると…
「オイ!」
扉の外からルーカスが叫ぶ。
「分かってるわ。すぐに行く。」
ラナが苛立ちを隠さずに扉に向かって叫び、再び私の方に向く。
ギュッと私の手を握り口を開いた。
「イヴ、天界で待ってるわ。」
その言葉に、眉を寄せながら躊躇いがちにコクンと頷いた。
私がやっと意志を示したのを見て、ほっとしたような表情をするラナ。
「じゃぁ、私は先に帰るわね。」
ゆっくりと離れる手。
ラナが部屋から出て行こうと扉に手をかけようとした時。
「ラナ!」
呼び止めたラナが振り返る。
そして、ずっと気になっていたことを聞くために口を開いた。
「ラナは魔界に来るのは初めてよね?」
私の質問にパチパチと目を瞬かせるラナ。
そして「当たり前じゃない」と言ってクスクスと笑いだす。