君のトナリ
昼休みが終わる直前に春斗が2組の教室に戻ってきた。
男子たちは春斗に群がって呼び出された理由やその内容をしつこく聞いている。
私は耳をダンボにしてみるけど春斗の声は聞こえない…
不安ばっかりが大きくなって泣きそうになる。
隣にいた美香が、私が聞いてくるって立ち上がったけど、私は美香を止めた。
だって、今、春斗に彼女ができたなんて聞いてしまったら、お昼からの授業なんて聞いていられなくなる。
春斗が2年生の女の子に何を言われたのか、それにどう答えたのか分からないまま1日の授業が終わった。
今日は部活がある。
美香と女子バスケ部の部室に行くと、すでに春斗が部活用の服に着替えて部室の前で他の部員と話をしていた。
部室はサッカー部とバレー部とバスケ部が並んでいるため、春斗の近くを通って部室に入らないといけない。
別に私と春斗は何もないのに、なぜか春斗と目を合わすことがすごく怖かった。
もう春斗には彼女がいるのかもしれない、私がどんなに好きでももう届かないかもしれない、もう春斗は私を見てくれないかもしれないって思うと、すごく怖くて…
そんなこと考えながら部室に近づいていると、涙が溢れてきて…
「あい?大丈夫?」
美香が優しく声をかけてくれたけど、私は何も言えずに部室とは反対方向に向かって歩き出した。
美香が私を呼んだけど立ち止まれなくて。
振り返ると泣き顔を見られるかもしれない。
声を出すと泣いているってバレるかもしれない。
どうしようもなくて、心の中で美香にごめんねって言いながら歩いていると
「あっ…」
美香が声を詰まらせた。