君のトナリ
理子が険しい表情で私の名前を呼びながら追いかけてきたから、美香も私も目を大きくして理子を見た。

「ハァ…ハァ…あのね…」

理子は教室から走ってきたのか、かなり息切れをしている。

「さっきあいからもらった手紙…ハァ…男子に盗られて…」

「え?」

さっき渡した手紙って。

「えぇっ!!???」

今度は私が大きな声を出したから美香がびっくりしている。

でも、その手紙には確か…

「ごめんね、あい。たぶん見られちゃった…」

理子が申し訳なさそうに私に謝る。

見られたって…誰に?

でもそんな風に女子の手紙を盗る男子なんて、学年の目立ちたがり屋軍団、町の野球部、『ライアンズ』しか思いつかない。

理子は誰が盗ったとは言わないけど、きっとライアンズの誰かが盗ったんだと思う。

だとしたら、ライアンズの男子と仲がいい春斗だってその手紙を見てしまうかもしれない。

ううん。春斗が見なくてもきっとライアンズの男子が春斗に言ってしまう。

だってその手紙の内容は…

「その手紙って…春斗に告白するかもって書いた手紙だよね?」

理子は私と目を合わさずこくりとうなづいた。

ヤバイ。これはかなりの緊急事態だ。

美香は何の事だか分からずポカーンとしていたが、今の私の一言ですべてを察したようだった。
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