Magic Rose-紅い薔薇の少女-


「ただ一つ、忘れないで下さい。
自分だけは見失わないで下さい」

皆、口を揃えて言うんだ。

自分を見失うな、と。

私にはまだ、その意味がわからない。
だけど……

私は狐に抱きついた。
大きなふかふかの体に。

「ええ、忘れないわ……絶対に」

門に向かう私の背中に狐は

「また会えますよ」

そう言った。

涙が浮かんだ。
だけど、それをグイッと拭き、門を潜った。

此処からは、私一人……



門の中に入ると、ソコはまるで別世界だった。

森……見慣れた森。

「一人、怖いわ……」

でも、まずサラを助けないときっと……

シャルディも
シルバーも
ネックレスも
戻っては来ないわ。


ガサッと誰かが出てきた。

女の子。
茶髪のショート。
ワンピースを着て、駆けて行く。

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