Magic Rose-紅い薔薇の少女-
「そうか、ならお前に新たな運命への道を与えてやろう。
月が、欠け始めたときに時間(とき)は動く。
心しておくんだな」
男はそれだけ告げるとまた、消えてしまった。
ローズは男が消えたあとも、残った風が完全に消えていくまで身動き一つしないで
その場所をただただ見つめていた。
みかづきに、なったころってこと?
ローズは家まで走り、出てきたときと同様窓から部屋へ入った。
時刻はもうとっくに就寝時間を過ぎていた。
大事にしまってある薔薇のネックレスを取り出した。
それをベッドまで持っていき、布団に潜り込みそれを見つめた。
「お父さま……」
それは生前父親が、
ローズに、とくれたものだった。
綺麗な真っ赤な薔薇のネックレス。
「お父さま……あいたい」
ローズのその悲しげな声は夜の闇に消えていった。
静かに涙を流し、眠るローズを月がそっと見守っていた。