Magic Rose-紅い薔薇の少女-

彼女は、無抵抗だった。

羽が切れ、ボロボロになるのをただ黙って耐えていた。

「“アゲハ”……アタシの名前、忘れんなのよ?」

極上の笑み。
見たものすべてが魅了されてしまうような、極上の。

彼女は決めたんだ。私に殺されることを。

――アタシは逃亡者

彼女の想いが、伝わる。

――ツクラレタ存在

  血だらけになってアタシは……
  そこにいた。

  『まま、ぱぱ、
  どうしておいてっちゃったの?』

  アタシのコト、きらいになった?

  『おいで』

  天涯孤独になったアタシに、
  差し出された手。

  『アゲハ、
  お前を置いて
  二人で自殺した親を恨んで……』

  『あげは?』

  『お前の名だ。“アゲハ”』


  アタシは名前と羽を貰った。

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