Magic Rose-紅い薔薇の少女-
「うぐっ……」
「兄様ったらもう本当にやんなっちゃうんだから!」
「すんまそん」
「もう兄様なんか出てって」
「はいはい」
響堵兄ちゃんの部屋に二人きり。
目を、覚まさない響堵兄ちゃんと……。
ぽろりと涙が頬を伝う。
大丈夫。
だって響堵兄ちゃんだよ?
あの“伝説の銀狐”なんだから……。
そうだよ、こんな私みたいな不幸をよぶ
不吉な黒狐とは違うんだから。
私とは、真逆の存在…………。
「んんっ……」
「兄ちゃん!?」
起きたの!?
「んっ……せ……」
違う……寝言?
「せ、り……」
せり?
「せん……り」
違う、私……?
そんな、不謹慎だとは思うけど、嬉しい。嬉しいよ。
「せん……」
「うん」
「せ、り」
「うん」
兄ちゃん、兄ちゃん……。
「わかった、わかったから私を、千里を置いていかないでよ……」
黒狐(わたし)が恋した相手(ひと)は
伝説の銀狐(きょうどにいちゃん)でした。