Magic Rose-紅い薔薇の少女-
第八章‐ただいま
――第八章‐ただいま――
私たちが最初にたどり着いた先は、泉だった。
あの、水仙の泉にそっくりな。
ただ少し違うのが全て反転している。
まるで、鏡みたいに。
そこに、真っ黒な神子がいた。
「……水仙」
長い黒髪を揺らし、きれいな顔は月に照らされていた。
見惚れてしまうほど、それは綺麗だった。
とっさにシルバーを私を庇うようにして前に躍り出た。
「フィレンツェは……」
ゴクリと唾を飲み込む。
「もう、この世界にはいない」
ピクリと動いたシルバーを征して私は問いかけた。
「いないってどういう事なの?」
「言葉通りですよ。
つまり最終戦争は“むこう”の世界で行われることを意味します」
淡々と言ってのける水仙。
「お前っ……」
「シルバー、いい。落ち着いて?」
「チッ」
「終わらせてください」
水仙は悲しそうに微笑んだ。
水仙、貴方……。
「ねぇ、どうして?貴方は私達の敵の筈……。なんでここまで良くしてくれるの?
貴方の瞳は、敵の目じゃないの」