有明先生と瑞穂さん
「帰らないの?」

「お前がこんなんなのに帰れるわけねーだろ。
有馬と瑞穂から殺されるわ」

「へへへ~」

「笑うとこじゃねー」


もう一度ため息をつくと布津のお腹がグゥ~~ッと盛大に音を立てた。


「お腹減ってる?」

「小遣い少ないから買い食いできねーもん」

「作ったクッキーまだ余ってるんだ。食べる?」

「食う!・・・でも深江のクッキー甘さ足りねーんだよなあ」

「ウワッ、もらっておいて失礼ね~」


布津がクッキーを食べる間も深江はまた足元を見つめて無表情でぼーっとしていた。

布津はあっと言う間にクッキーをザラザラと口に流し込み完食する。




「・・・・・・深江がそこまでダメージくらうことないんじゃない?」

「え・・・」

「先輩のことだろ。きちんと断れたんだろ?」

「うん・・・」

「深江がそこまで気に病んでくれるなら、それだけでも報われるさ。
俺が言うんだから間違いない」

「それって経験談?」

「うっせ。そうだよ」


話す時は作り笑いをするくせに、会話が途切れると無表情に戻る。


居心地が悪い。
早く帰りたい。
ほっとけない。
心配だ。
気になる。


瑞穂に対する気持ちが恋愛感情とするならば、深江に対する気持ちはそれではない。これはそういう気持ちじゃない。


ただの友情だ。



だから、これ以上自分が踏み込んでいいものではない――・・・
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