有明先生と瑞穂さん
『あきら』と呼ばれたその男はまるで布津の姿なんか見えていないようで、嬉しそうに深江の元に走ってくる。


「ははっ!こんなとこで合うなんて思わなかったよ。
久しぶり!学校帰りか?」

「そうだよ。でもなんでこの駅に?」

「電車で帰ってきてたんだけどわかんなくなっちゃって」

「ふふっ、相変わらずすごい方向音痴」


黒いサラサラの髪とかわいらしくもキリッとした目。
ものすごいイケメンだ。
有馬に言ったら怒られるが、有明よりも断然イケメン。
芸能人みたいだ。



「なんでこんな中途半端な時に帰ってきたの?」

「親戚で不幸があって・・・」

「そうなんだ。大変だったね」


そこまで話してようやくその男が布津の存在に気付いた。


「――っと、こんばんは」

「・・・ウス」


戸惑いながらも布津は会釈する。


「あ・・・彼氏?」

深江にそう聞いたその男は少しだけ暗い顔をする。
そのたった少しの反応だけで深江に気があることががわった。


「ううん、友達」

「あ・・・なんだ、そっか!」


――ほら、今ほっとした。



「えっと・・・布津君、中学まで幼馴染だった亮(アキラ)。
布津君と晴ちゃんみたいな仲だったの」

「へえ・・・そうなんだ」


深江が誰かを呼び捨てにしているのは珍しい。
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