有明先生と瑞穂さん
戸惑った気持ちのままの深江を乗せて電車は走る。
隣には幼馴染の亮。

懐かしい亮の匂い。



「背、伸びたね」

「ん。結は小さいまんまだな」

「女の子はいいの!」

「相変わらずブリッコのまんまか?」

「ブリッコじゃないもん」



「うん、俺に対してはいつもブリッコしなかったもんな」



嬉しそうに笑う顔が大人っぽくなった。
それでもあの頃のままだ。



――話したいことがある。




『好きだ』と言ってくれたのに、きちんと自分の気持ちを伝えないまま離れてしまった過去。

『さようなら』すら言えないまま終わってしまった。

あんなに仲がよかったのに。




「結、さっきの人のこと好きなの?」

「え・・・・・・」


言葉を詰まらせる深江に慌てて言葉を付け足す。


「いや!未練があるとかじゃなくてさ。
普通に気になるんだよ。
彼氏だと思ったときはちょっと残念だと思ったし・・・ってアレ?これ未練かな」


「ふふ・・・そんなんじゃないよ」


「そ・・・そっか」


亮は頬を染めてボリボリと頭を掻いた。

告白してきた時もこういう顔をしていた。

それすら懐かしい。


「そういう亮は彼女いないの?」

「んー、今はね」

「できたことあるんだ」

「あっ・・・妬く?」

「・・・・・・あんまりいい気しないね。なんでだろ」

「それだよそれ!俺もそういう気持ち」

「なるほど」


二人でクスクスと笑う電車内。



――終わりじゃなかった。

本当にこれで終わりじゃなかったよ、晴ちゃん。
< 1,009 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop