有明先生と瑞穂さん
瑞穂は家の冷蔵庫から持って来た缶のお茶を手渡し、適当な段差に腰を下ろす。

布津はお礼を言って受け取り瑞穂の隣に腰を降ろした。


「さんきゅ。喉がちょっとパサパサになってた」

「何か食べたの?」

「深江のクッキー。最近よく作ってくるよな」

「だんだんうまくなるよね。女の子らしくていいな」


たわいもない話。
やっぱり瑞穂がまだ好きだと布津は自覚する。
だからこそ、自分の深江への気持ちに戸惑う。




「どうしたの・・・?結ちゃんのこと?」


突然確信を突かれて思わず肩がビクリと跳ねた。


「よくわかったな」

「私を呼び出すなんて珍しいし・・・クッキーもらったって、さっき結ちゃんと会ってたってことでしょ?
だったらそのことかなーって」

「名探偵瑞穂」

「真実はいつもひとつ」



誇らしげに腕を組む瑞穂を見るとおかしくなって噴出した。




「お前、何か知ってるっぽかったからさ・・・。


教えてほしいんだ。


あいつのこと」



「・・・・・・」



瑞穂は無表情のまま前を向いた。



(コイツの無表情は不安になったりしないし、何を考えてるかも大体わかるのにな・・・)


深江と二人なら少しだけ感じていた息苦しさ。
瑞穂とならそれはない。

しかしそれは『好きだから』ではなく、長い付き合いが生み出したものだ。
< 1,012 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop