有明先生と瑞穂さん
空は暗くなり星が見える。

今日は少し肌寒い。


体育館からは「あざーしたぁーっ!」とバスケ部員の声が聞こえた。

部活がようやく終わり、部員はゾロゾロと部室へ着替えに向かう。



「へっくしゅ!」


まだ夏服のままの深江は寒気がしてくしゃみをした。


「深江さん。こんな時間に何をしてるんですか?」

「あ!有明先生!」


そこに当直の有明が通りかかった。


「えっと・・・布津君を待ってて」

「! ・・・布津君を・・・」


有明は昨日瑞穂と布津が会っていた理由をなんとなく察する。



「それにしてもその格好じゃ寒いでしょう」

「えへへ・・・先生はもう長袖なんですね」

「僕は寒がりだから」


有明は「そうだ」と言って手元に教科書類と一緒に持っていた薄手のカーデを深江に差し出した。


「え・・・?」

「僕のですけど、返すのは明日でいいですから着て帰ってください。
今日は冷えますから」

「え・・・えーー?!い、いいんですか?!」

「むしろ僕のなんかで申し訳ないんですけど・・・」

「いえっ!むしろ超嬉しいです!キャーー!!有馬さんに自慢しよー!!」

「あはは・・・」


深江ははしゃぎながらぶかぶかのカーデに腕を通した。


「あ、そーだ先生、携帯持ってますか?
体育祭の写メ、先生にあげてなかったでしょ?
赤外線で送ります」

「体育祭の・・・ああ!」


戸惑いながらも携帯を出し、それを受け取る。


(はは、瑞穂さんの驚いた顔)


ミートボールを食べる有明の目の前には真っ赤になった瑞穂の顔が映っていた。


この時は全然気付かなかったがこの写真がすでに瑞穂が有明を好きだったことを理解させる。


「まいったな」なんて言いながらもいいものを手に入れたと喜び有明は深江と別れた。
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