有明先生と瑞穂さん
「悪い深江、待たせた・・・・・・ってどうしたのその上着」

「えへへーいいでしょ」

「男モンじゃん」

「有明先生が貸してくれたのー」

「うげ、キザなことするなー」


布津も半袖だが全然寒くはないようだ。


「家まで送ろうか?暗いし」

「いいよ。駅からは近いから」

「そっか。あ、昨日の人に迎えに来てもらえば?
仲いいんだろ?」

「ぅ・・・・・・・・・」


亮のことが布津の口から出て深江があからさまにぎこちなくなる。

それを見て布津もハッと気付いて口を閉じた。



沈黙のまま校門を出てしばらく歩くと他の生徒達もまばらになる。


そこで深江が先に口を開いた。


「布津君・・・ほんとは・・・怒ってる?」

「え・・・?」


さっきまで有明に会ってテンションが一時的に上がっていたが、また戻っている。

布津は「あーー・・・」と唸りながら言葉を選んだ。



「怒っては、いない」

「嘘」


深江の顔を見ると眉間にシワを寄せていた。


「結が布津君を自分勝手な理由で振り回したんだもん。
怒って当然だよ・・・」


その言葉に布津は長く深いため息をついた。



「怒るっつかね、最初は悩んだよ。
瑞穂が好きなのに何でこんな不快になるのかねって」

「・・・っそれは、結が思わせぶりなことしたから仕方ないよ」

「でもそれはさ、深江も悪いと思いながらもそうしたかったんだから仕方ないんだろ?」

「え・・・・・・」

「深江も仕方ない」

「・・・・・・?」


困惑した顔で見上げる深江に布津が笑いかける。
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