有明先生と瑞穂さん
深江は首を振る。

布津は「なんで?」と聞き返した。


「布津君の優しさに甘えるわけにはいかないもの・・・」

「優しさ?!」


笑いながら大げさに驚くのも気を遣ってか・・・



しかし布津は声を張り上げた。



「優しくなんかしてねーよ!!
俺が一緒にいたい。お前も一緒にいたい。

じゃあいいじゃん!」


「え・・・?」



振向くとニカッと笑う布津がすぐ近くに立っていた。


「何泣いてんだよ。
俺は瑞穂にしか優しくねーから涙なんか拭いてやんねーぞ?」

「えう・・・」


そう言いながらも乱暴に深江の頬をこする。



「俺、昨日まで『異性』ってことを気にしすぎてたんだ」


布津は話しながら涙を拭いた手を深江のシャツでぬぐう。
こんな話の途中でなければ「何すんのよー!」と怒っているところだ。



「俺の親友って瑞穂なのに矛盾してるよな」


「・・・・・・」



布津の心理がわからずにただポカンと口を開けて呆ける。



「俺とお前が一緒にいても今のとこ誰にも迷惑かかんねーぞ。
・・・まあ、お前を好きな先輩や俺を影ながら好きでいてくれるであろう美女がいれば話は別だが」

「はは・・・ないない」


思わず出たツッコミに布津が笑う。



「結と・・・一緒にいたいと思うの?」

こんなに酷いことをしたのに――。


「だってお前おもしれーんだもん。
瑞穂と対照的すぎるっつーの?
素直じゃねーし、ワガママ言うし、その割には意外と溜め込む性格してるし。

つうかさ、一緒にいて楽しいんだよ。
深江は違う?」

「ちがわ・・・ない・・・」


初めて布津が自分をどう思っているかを知った。
それが正直に嬉しい。


「結も・・・結も布津君といるの楽しい・・・!」
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