有明先生と瑞穂さん
(あ、ありえない・・・・・・)


有明は小浜を引き剥がすことすら忘れてその場に立ち尽くした。



「今の瑞穂さんでしたよね?彼女もこのあたりに住んでるのかしら・・・。

・・・・・・?

有明先生?」


反応のない有明を不思議に思い小浜が見上げる。


「どうしたんですか?具合悪くなりました?顔色・・・悪いですよ」

「え・・・っ、いや、大丈夫です・・・」

「・・・・・・?」


明らかに様子がおかしい有明を疑問に思うが、すぐに後方から唸り声が聞こえ、有明はパッと離れて口之津の元へ向かった。



「大丈夫ですか、口之津先生」

「う~~~~、スッキリした・・・」


口之津はコンビニで買った水で口をゆすぐと力なく立ち上がった。



(さっきの位置からじゃ口之津先生も見えてなかったかな・・・)


瑞穂の驚いた顔が離れない。

どう思っているだろうか。

浮気を疑う――?


『疑う』なんてものじゃない。
『浮気現場を目撃した』とすら思っているかもしれない。



「・・・? 有明先生? もらいゲロっすか?」

「いや・・・大丈夫」


有明の異変に口之津も気付く。



「さ、早く部屋に行きましょうか」


口之津に手を貸すと、何事もなかったように笑ってマンションへと歩き出した。
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