有明先生と瑞穂さん
「ここが布津君ちなんだぁ~」

「晴子んちと近いんだね」

「オイッ!夜だから静かにしろよ!親とか寝てるんだからな!」


はしゃぐ有馬と深江に念入りに注意をして玄関の鍵を開けた。



「ただいま~」

「おじゃましまーす」


それぞれ小さな声で入ると奥から二番目の扉が開いて誰かが顔を出す。


「お帰り兄ちゃ・・・うわあ」


弟の小介だ。



「布津君の弟?!すごーい!ソックリ!」

「こんばんは・・・」

「アハハ!弟テンション低いー!性格似てなーい!」

「ああもうシーーッ!!」


布津は慌てて有馬と深江に注意する。



「こんばんは、小介君。お邪魔します」

「あ、晴ちゃん。こんばんは」

「ごめんね、大勢で・・・」

「いや、兄ちゃんが女ばっかり連れてくるなんて天変地異が起こるより珍しいからいい」

「アハハ!言われてるよ布津君!」

「てめーなあ!」



騒ぐ皆を抑えながら布津はこっそり瑞穂を盗み見た。

変わらずに楽しそうに笑っている。




(大丈夫かよ・・・)



布津には今、なるべく瑞穂を楽しませることしかできない。

一瞬だけでもいい。
さっきのことを忘れて楽しんでくれれば――・・・。





(俺は何もできねえ・・・。
瑞穂の『嘘』を見抜けるのは、俺だけなのに――・・・)


布津は唇を噛み締めた。
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