有明先生と瑞穂さん
布津は何も聞かずに黙って一人、ガツガツと昼食を食べる。
しばらくして瑞穂が自分から話しだした。



「・・・布津、昼からも部活あるの?」

「うん」

「そっかー・・・」


瑞穂は何か言いたそうにもぞもぞしながらもそれ以上は言わない。

布津は自分からは絶対口を開かずに瑞穂が話し出すのを待った。



「・・・部活終わるの待ってようかな」

「何かするの?」

「や・・・何もないけど・・・・・・」

「・・・・・・」



体育座りして腕を前に組んでいた瑞穂はそのまま隠すように腕の中に顔をうずめた。



「・・・・・・布津、部活休めば?」

「できねーよ」

「ケチ・・・・・・」


内心、布津は瑞穂がようやくこういうことを言ったと安心する。


瑞穂の方を見ると相変わらず顔を隠したまま。

しかしぽつりぽつりと話しだした。




「なんかね、有明先生が何かしたわけじゃないって、わかってるんだけどね」

「うん」

「でも嫌な想像しかできないんだ・・・」

「・・・うん」

「昨日言ってたけどさ、今日も一緒に出かける予定なのにね、・・・うっ、嘘ついて、断っちゃうし・・・・・・」

「・・・・・・」

「先生はごめんって言ってくれたのに・・・なんか、全然・・・許せないし・・・・・・」

「そっか・・・」


布津は食べる手を止めて瑞穂の話を聞いた。




「先生のこと好きなのに・・・なんかむかつく・・・・・・」


弱々く言った言葉がかすれていて、布津は慌てて瑞穂の肩を引き顔を上げさせた。


「わっ・・・!なに・・・」

「いや・・・」


泣きそうだが、泣いてはいない。

布津は小さく短いため息をついた。
< 1,066 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop